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従来からいつも使っていた時計(ソーラー電波、アナログ)が故障してとりあえずのリリーフとして、カシオのボトムレンジのスタンダードクオーツ(LIN-163-7BJF、チタン)を入手してみました。外見は「チープ&クリーン」な感じでまずまずでした。がなにより、驚いたのはその精度の良さ。公称精度の±20秒(月)をはるかに凌ぐ、1秒/月以内なのでビックリです。
そこで、最近の安いクオーツって、どんな精度なのか興味がでてきて、幾つか入手して調べてみました。
また、リファレンスとして機械式時計の精度もあわせて調べてみました。
SEIKOが1970年頃から普及させていった、クオーツ時計は従来の機械式時計に比べ桁違いの精度により市場を席捲し機械式時計は駆逐されていきました。ただ近年、どちらかと言うと趣味の嗜好品の意味合いが強い、時計の形をした宝飾品(もしくは見栄はり用・・)として一定の支持を受けてきています。
機械式でも数千円~数十万~数百万~数千万~数億まであります、まあ精度では逆立ちしてもクオーツに勝てないので、持つ喜び・・、ブランディングやデザインなどで付加価値をつけています。
この構図、銀塩カメラ(フイルム式)がデジカメにより駆逐されたのに似てますね。銀塩の老舗のLICAも、一部のブランド好きな方へのアピールするデジタル商品で生き残りをはかります。
以下に機械式の時計の精度の例を示します。
これを見ると、一日でも数秒、一週間で数十秒~1分以上の誤差が出ています。
こんな誤差より、腕の隙間からチラリと覗く「ROLEX」の文字に価値を見出す人もいるでしょうし、毎日ゼンマイを手巻きする事に心の安らぎを感じる人もいるかもしれません。いずれにせよ、純粋機械としてこれらを見るとそれはそれなりに愉しいものが見えてきます。
1000円以下でも、精度の面では立派なものが買えます。(テスト品の購入時期はいずれも2014年1~2月)
以下、今回調べた安いクオーツ時計です。
品名 | 形式 | ブランド | mov | 電池 | 電池寿命 | 月差(秒) | 防水 | 購入価格 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A158WA-1JF | デジタル | カシオ スタンダード | カシオ | CR-2016 | 7 | ±30 | 日常生活 | 864 |
MQ-24-7BLLJF | アナログ3針 | カシオ スタンダード | カシオ | SR-621SW | 2 | ±20 | 日常生活 | 891 |
LIN-163-7BJF | アナログ3針 | カシオ リニエージ | カシオ | SR-626SW | 3 | ±20 | 5 | 3618 |
VP84J851 | アナログ3針 | シチズン Q&Q | ミヨタ | SR-621SW | 2 | ±20 | 10 | 1029 |
APBS111 | アナログ3針 | セイコー アルバ | EPSON | SR-626SW | 4 | ±20 | 5 | 3670 |
フィールダー | デジタル | ダイソーフィールダー | 不明 | LR41 | 不明 | 不明 | 非防水 | 105 |
A158WA-1JF | MQ-24-7BLLJF | LIN-163-7BJF | VP84J851 | APBS111 | フィールダー |
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リファレンスとしては、チェックの時間の30分以内に強制受信させた電波時計(カシオ WVA-105H)を使い各々の対象の時計との時間の差を目視で確認しました。
時計は、腕にはつけず同じ場所にかためて放置していました。(室内の直射日光の当たらない場所、空調は入れていません)
経過日数と誤差(秒) 2014/2/18開始~2014/3/25終了
品名\経過日数 | 0日 | 5日 | 10日 | 15日 | 20日 | 25日 | 30日 | 35日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A158WA-1JF | 0 | -4 | -6 | -7 | -9 | -12 | -12 | -13 |
MQ-24-7BLLJF | 0 | -3 | -3 | -3 | -5 | -6 | -6 | -7 |
LIN-163-7BJF | 0 | -1 | 0 | 0 | 0 | -1 | 0 | 0 |
VP84J851 | 0 | -2 | -2 | -2 | -3 | -3 | -3 | -3 |
APBS111 | 0 | -4 | -5 | -6 | -8 | -10 | -10 | -11 |
フィールダー | 0 | -6 | -9 | -11 | -16 | -19 | -21 | -25 |
周囲温度(℃) | 6~12 | 8~12 | 8~17 | 10~18 | 9~18 | 9~18 | 9~10 | 10~19 |
今回、全体に遅れ気味の結果となりましたが、これは、テスト時期が2月の寒い時期である事や、腕につけずにいたことで温度も低温状態のままであった事が影響しているものと思われます。
ちなみに、時計の誤差の要因(機械式、クオーツ式)は次項に少し説明してあります。
実際の結果としては、まず、100均の腕時計でも、-21秒/月程度なので十分実用になるレベルである事が分かりました。
公称誤差が月差±20秒のものはどれも、その半分の10秒以内に収まっています。公称誤差が月差±30秒のカシオデジタル(A158WA-1JF)でも-12秒/月で公称誤差よりもかなり精度が良い結果でした。
クオーツの精度の要である水晶発振素子の特性(次項参照)を考えると、もう少し気温の高い時期にテストすればさらに良い結果が得られる可能性があると思われるので、別途テストの予定です。
今回、精度が飛びぬけてよかったカシオLIN-163-7BJFは、たまたま良い素性の素子が組み込まれていたのかも知れません。
もしくは低温でたまたま正確になるような素子で、温度が上がれば逆に大きく進むかもしれません。
工業製品である水晶素子もやはりその特性にはバラツキがあり、年差ウン秒と公称する高級時計用には、実際に選別した素子が用いられています。
パソコン用のCPUもそうですが、厳密に管理され製造された精密な工業製品にも結構その個体の性能に個性があるのは、面白いですね。
いずれにせよ、こんな安い時計でも実用性としては十分で、気軽に色々集めて、とっかえひかえして楽しむのも良いかもしれません。